アラインテクノロジー社を巡る特許紛争-インビザラインを巡る特許侵害訴訟

以前投稿した記事において、アラインテクノロジー社の特許戦略について簡単にご紹介しました。

あわせて読みたい
【日本と米国】インビザラインに関連する特許-アラインテクノロジー社の特許分析  前回の記事でアラインテクノロジー社が保有する特許件数について簡単に紹介しました。 https://globalbenrishi.com/align-technology-stock-analysis/ おさらいします...

アライン社は、 従来のワイヤー矯正治療を主とした歯科矯正業界にクリアアライナー(インビザライン)という破壊的技術を導入することで、業界に技術革新をもたらしました。

また、アライン社は、一連の連続した歯列に対応するクリアアライナーを一定の期間毎に交換することで目標歯列を達成するといったインビザライン技術を独占するために、ベンチャーキャピタルからの出資金を用いて世界各地に特許出願をしました。アライン社は、インビザラインの基本技術を保護するための一連の特許出願を創業年である1997年に出願しているのです。

このように、アライン社がビジネス戦略として如何に特許を重要視しているかがよく分かるかと思います。同社は、この初期の段階で構築された特許ポートフォリオのお陰で、他社の新規参入を阻止することができ、急成長を遂げるクリアアライナー市場を独占することができたのです

一方で、同社は、新規参入組との間で幾つかの特許紛争を抱えていました。今回の記事では、アライン社を巡る代表的な特許紛争について以下にご紹介いたします。

目次

1. OrthoClear社との特許紛争

アライン社は、 Zia Chisiti氏によって設立された OrthoClear社に対して特許侵害、虚偽広告、名誉棄損並びに商標侵害に基づく訴訟を2005年に提起しました。 Zia Chisiti氏 は、アライン社の創業者であり、2002年に同社のCEOを退任した後に、OrthoClear社を設立したのです。

アライン社とOrthoClear社との間の訴訟は、2006年に和解により決着しました。この和解では、アライン社はOrthoClear社に対して特許買取料として2000万ドルを支払うことに同意した一方で、OrthoClear社は米国における同社の販売活動を停止することに同意しました。

2. ClearCorrect社との特許紛争

特許紛争の発端は、ClearCorrect社がアライン社が保有する特許が無効であると共に、同社の製品はアライン社の特許を侵害していないことを請求した確認訴訟(DJ action)を2009年に提起したことから始まりました。アライン社がClearCorrect社を特許侵害により訴えないことを宣言したため、ClearCorrect社は上記確認訴訟を取り下げました。

その後暫く経過した後、今度はアライン社側がClearCorrect社を特許侵害により提訴しました。アライン社とClearCorrect社との間の特許紛争は泥沼化し、米国、イギリス、ブラジルでの国際的な特許紛争(特許侵害訴訟、無効審判等)に発展しました。

2019年3月において、アライン社とClearCorrect社を傘下に置くStraumann Group(以下、Straumann社)との間において10年に及ぶ特許紛争が和解により決着しました。主な和解内容は以下となります。

  • 国際的に展開された特許訴訟及び無効審判の取り下げ
  • Straumann社による3500万ドルの和解金の支払い
  • Straumann社とのアライン社との5年間の業務提携(Straumann社が、アライン社の口腔内スキャナiTero(約5000台)を自社製品に取り入れること。)

尚、Straumann社は、アライン社に追加の和解金1600万ドルを支払うことで最後の和解内容(アライン社との業務提携)についての合意を破棄しました(2019年6月17日)。このニュースによりアライン社の株価は一時5%近く下落しました。

[affi id=2]

3.3shape社との特許紛争

アライン社は、デンマークの口腔内三次元スキャナTriosを製造販売している3Shape社に対して6件の特許侵害訴訟を2017年に提起しました。訴訟内容は、3Shape社が製造販売しているTriosがアライン社が保有している26件の特許権を侵害しているというものです。

さらに、アライン社は、関税法第337条の規定に基づいて、3Shape社のTriosの米国内における輸入の差止を国際貿易委員会(ITC)に対して請求しております。

一方、被告側である3Shape社側もアライン社に対して自身が保有する特許権を侵害されたとして特許侵害訴訟を提起しております。特許紛争は現在も進行中となり、この特許訴訟の行方について今後も注目していく予定です。

まとめ

アライン社は、クリアアライナー市場に新規参入する企業に対しては積極的に自己が保有する特許を権利行使することで、自社の競争優位性を維持しているのです。これにより、クリアアライナー市場における自社の圧倒的な優位性を確保することができ、時価総額240億ドルの企業まで成長することができたのです。

クリアアライナー市場は今後も順調に成長することが予想されると共に、アライン社の重要特許が今後も特許期間満了により消滅していきます。アライン社を巡る特許紛争については今後も注目していきたいと思います。

[affi id=1]

また、クリアライナー市場に新規参入するスタートアップ企業についての記事も参考になるかと思います。

あわせて読みたい
【インビザラインの今後は一体どうなる?】クリアアライナー市場に続々と進出するスタートアップ企業(C... 【インビザラインに係る基本特許の状態】 以前の記事でアラインテクノロジー社が保有するインビザラインに関する特許権が特許期間満了により続々と消滅していることを述...
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次