【注目!】弁理士と英語-弁理士業務の変化

今回の記事では弁理士と英語についての記事を書いてみたいと思います。

目次

弁理士とは?

弁理士は日本の8士業(弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、弁理士、社会保険労務士、行政書士、海事代理士)の一つで特許等の知的財産権に関する業務を行うための国家資格となります。弁理士はあまり知名度がなく、それって便利屋さんですか?と聞かれることも多々あります。

ただ、この弁理士(Patent Attorney)という資格が世界的な国家資格であるということをご存知でしょうか?

特許等の知的財産権は極めて専門的な法律的知識が必要となりますので、各国で弁理士制度が制定されています。特に、韓国の弁理士試験は非常に難しいことで有名ですね(日本の弁理士試験もここ数年は難化しています)。米国では、ロースクールを卒業して司法試験に合格した弁護士(Attorney at law)がパテントエージェント試験を合格すると、特許弁護士(Patent Attorney)として活動することができます。また、弁護士資格がない人でもパテントエージェント試験を合格することでパテントエージェントとして活動することが可能です。パテントエージェントの場合には、米国特許商標庁(USPTO)に対する手続きに関する業務のみを行うことができます。最近は、日本の弁理士が米国の特許事務所にトレーニーとして短期滞在してパテントエージェントの資格を取るということも頻繁に行われていますね。

国際的な弁理士制度についての詳細は、このページをご参照ください。

弁理士は、他士業に比較して英語を使う機会が非常に多いのです。英語を使う業務としては以下となります。

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外国出願の仲介(内外業務)

日本企業が海外に特許出願等する場合には、日本弁理士は、日本企業と外国弁理士(現地代理人)との間に入ることで、外国出願の仲介サービスを提供します。

仲介サービスの具体例としては、英文明細書の作成、サイン書類等の出願書類の準備、オフィスアクションに対するコメント提供、現地代理人宛てのレター作成等となります。また、訴訟、鑑定、異議申立等のサポート業務もあります。

どうでしょうか?業務のほとんどが英語に関連しています。ある程度の英語ができないと仕事にならないのです。特に、英文明細書の作成については各国プラクティスに合致したクレームドラフティングスキルが要求されます。不明瞭な日本語明細書に基づいて、論理的且つ明確な文章を英語で記載するスキルが要求されるのです(これは英語のスキルだけでなく、技術的知識や論理的思考能力も大きく関係しますね)。

近年は機械学習を用いたGoogle機械翻訳等が注目を浴びていますが、機械翻訳のアウトプットも精度が向上したといえ実用レベルには未だ到達していません。機械翻訳に対するポストエディットが必要となります。ですので、弁理士が内外業務を扱うにはこれからも高い英語力が要求されるものと考えます。

外国企業からの日本出願の依頼(外内業務)

外国企業が日本に特許出願や商標出願をする場合には、日本の特許法上では必ず弁理士等に出願管理を委任する必要があります。このように、弁理士は、外国企業からの依頼に応じて日本の特許出願を代理することがあります。外内業務では、外国企業によって提供された英文明細書の翻訳文を作成したり、日本特許庁より送達された拒絶理由通知書に対しての対応コメントや応答案を英語で作成することがあります。

このように、外内業務では、お客さんである外国企業又は外国弁理士との間で英語でのコミュニケーションが発生しますので、内外業務よりも高い英語力が要求されます。

つまり、先ほど紹介した内外業務では、お客さんが日本企業、取引先が外国弁理士となる一方、外内業務では、お客さんが外国企業及び/又は外国弁理士となるのです。このため、内外業務よりも高い英語力や英語での営業力が要求されるのです。外内業務では、外国企業や外国弁理士事務所に訪問して日本特許プラクティスに関するレクチャーを実施する機会もありますし、日本特許プラクティスについて英語でWEB上に情報提供する機会もあります。

さらに、内外業務と外内業務の両者を経験している場合には、 INTA(国際商標協会) やAPAA(アジア弁理士協会)等の国際会議に参加することで、グローバルな弁理士コネクションを構築するのも仕事の一つとなります。国際会議等でスピーカ役を依頼される機会もあります。

ここまで、弁理士の業務のうち内外業務や外内業務について紹介しました。この2つの業務は英語スキルがないと太刀打ちできません。

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では、弁理士の基本中の基本業務である明細書作成業務についてはどうでしょうか?

国内特許業務(内内業務)

弁理士の基本中の基本業務である明細書作成業務であっても英語力は必要であると筆者は考えています。明細書作成業務は弁理士業務のなかで最も難しい業務の一つとなります。全ての弁理士関連業務の出発点が明細書作成業務となります。明細書があるからこそ、日本の特許出願業務、PCT出願業務、外国出願業務、年金管理業務、訴訟、審判、鑑定等のポストイシュー業務が発生するのです。大げさに言うと、一本の明細書作成に係る費用が30万円であるとしても、そこから付随する新たな仕事の経済的価値は何十倍の規模にも達するのです(こんな基本的なことも理解せずに、明細書作成業務を軽視される方も中にはいらっしゃいますね・・・)。

話を本題に戻しますが、日本語明細書の作成スキルには英語力がズバリ要求されます。近年の日本企業の積極的な海外進出に伴い、日本企業による外国出願の件数は徐々に増加しています。これに伴い、英語にし易い明確且つ簡潔な日本明細書(以下、グローバル明細書という。)の作成スキルが要求されるようになりました。極論を言いますと、Google翻訳等の機械翻訳の精度が高くなるような日本語明細書を作成することが将来的に要求されるかもしれません・・・。

つまり、英語を意識した明細書作成スキル(特に、クレームドラフティング)が現在の明細書作成スキルの本丸となっています。昔は難解な日本語(さらに英訳困難)を用いた明細書であっても顧客から文句は言われなかったのですが、ズバリそれが現在では全く通用しなくなっているのです。

では、どうしたらグローバル明細書を書けるのでしょうか?

SVOを意識した文章(特に、主語を意識した文章)も勿論大事なのですが、ズバリ英語で文章構成を考えて日本語でアウトプットすることが大事なのです。特に、クレームドラフティングでは、英語でロジックを組み立てて日本語でアウトプットすることが肝要となります。

また、各国の特許プラクティスを意識した明細書の作り込みも重要となります。例えば、ソフトウェア関連の発明ですと、米国出願のコンピュータ関連発明に関する最新判例(ポストAlice)や権利行使を踏まえたクレームドラフティングが内内業務の段階から要求されているのです。

つまり、内外業務と内内業務は互いにリンクしており、両者の業務を十分に理解した上で、明細書を作成するというのが今の時代の弁理士業界のトレンドですね。ですので内内業務と内外業務で担当弁理士を統一するといった流れになってきているのです。一方、苦労して明細書を作成した弁理士が外国出願も担当することは合理性があるのですが、全体効率の観点からは事務所経営上の課題もあります。餅は餅屋というように、状況に応じて分業体制にしたほうが良い場合もあるのかなと個人的には思うわけです。

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まとめ

こういった弁理士業界の流れの変化がありますので、これから弁理士業界に踏み出す方は英語についても十分に準備を進めることをおススメします。特に、弁理士業務で大切なのは、リーディング能力とライティング能力となります。さらに、正確な英文法の知識が要求されます。前置詞(in, on)の選択一つでクレームの権利範囲は大きく変わりますので。

また、弁理士が業務で使う英語もかなり限定されてきますので、実務経験を通じて特許業界の英語には慣れてくるかとは思います。米国やEP等の外国のオフィスアクションや新規外国出願の英文明細書ドラフティングを1000件ぐらいやれば内外業務の一流の担当者といえるのではないでしょうか。

次回は弁理士によるTOEIC対策といった内容の記事を書きたいと思います。

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