【なるほど!】Dexcom(デクスコム)の株価と特許-期待の米国医療機器メーカの今後についての簡単な検証

こんばんは。庶民派且つロスジェネ世代のアラフォー弁理士となります。

以前の記事について驚愕の成長を続ける米国医療機器メーカについて簡単にご紹介させて頂きました。この記事はPVを見る限りかなりの反響がありました。

米国株投資家は、驚異的な株価上昇を誇る米国医療機器メーカ(Align technology, Dexcom, Shockwave, Intuitive Surgical等)に現在も注目していることが伺えます。

あわせて読みたい
【驚愕の成長】特許と企業価値-米国医療機器メーカの株に注目 こんばんは。国際派アラフォー弁理士です。 今回は、特許と企業価値並びに米国医療機器メーカについて簡単に述べます。 このブログですが当初インビザラインについての...

今回の記事では、米国医療機器メーカのうちDexcom(デクスコム)の株価と特許について簡単にご紹介させて頂きます。

目次

Dexcomについて

以前の記事でも書きましたが、Dexcom(デクスコム)について簡単にご紹介します。

Dexcom websiteより引用

DexCom社は、グルコースをモニタリングする装置(CGM)を製造する会社となります。

CGMは、皮下の間質液中のグルコース値を測定することで、グルコース値に対応する血糖値を測定することが可能となります。

同社のCGMは、血糖値を常に監視する必要がある糖尿病患者のQOL(生活の質)を飛躍的に向上させる装置となります。

CGMが身体の皮下に取り付けられた状態で血糖値データがスマホやApple Watch等のウェアラブル装置に送信される仕組みとなっており、患者はスマホを通じて血糖値を5分間隔でチェックすることが可能となります。つまり、血糖値の時間変化を示すグラフが患者に提示されるため、患者は、CGMを通じて血糖値の時間変化を把握することができます。

また、従来のCGMでは、グルコース値をキャリブレーションするために、患者が自身の指先に針を刺す( 指先穿刺 )ことで、指先から出る少量の血液から血糖値を測定していました。

一方、デクスコムの最新CGMであるG6は以下の優位性があるようです。

  • 指先穿刺なしでキャリブレーション(グルコース値と血糖値との間の関係の特定)が可能な点
  • センサの交換期間が10日である点
  • 5分間隔で血糖値が測定可能な点
  • 血糖値の測定精度が高い点
  • 低血糖又は高血糖に対するアラーム機能

このように、G6によって全世界にいる4億人以上の糖尿病患者のQOLが飛躍的に向上する可能性があるのです。

G6と連携するタッチパネル式のインスリンポンプを製造開発するTandem Diabetes Care社の株価もここ数年で急騰しております。タンデム社のインスリンポンプでは、患者がタッチパネルを操作することでインスリンを体内に注入可能となります。

また、血糖値をリアルタイムに測定するCGMと、CGMからの血糖値に基づいて自動的にインスリンを体内に注入するインスリンポンプとからなる人工膵臓システム(自動インスリン注入システム)が将来的に期待されているのです。

現在、デクスコムのCGMは日本でも販売されており、テルモがデクスコム製品の販売代理店となっています。日本ではデクスコムのG4 PLATINUMが現在販売されており、米国で現在販売されているG6の導入は数年後となるようです。

テルモのホームページを見ると、G4 PLATINUM のセンサの使用期間は7日となり、センサの価格は1万円となるようです。単純計算では、G4を1年間使用した場合52万円の費用がかかります。

デクスコムのCGM(特に、G6)については以下の動画が参考になるかと思います。

Dexcomの株価

次に、デクスコムの株価チャート(5年レンジ)は以下となります。

Dexcomの株価チャート Yahoo Financeより引用

同社の株価は5年前の40ドルから現在の150ドルまで3.7倍程上昇しております。また、同社の株価は、2011年の最安値7ドルから比較すると約22倍の上昇となっているのです

しかしながら、上記チャートに示すように、同社の株価はボラティリティが大きい点に留意が必要となります。過去5年の間に同社の株価は4回の暴落を経験しています。例えば、2017年では高値から50%程度も暴落しているのです。このように、同社の株価は暴落を何回か経験しつつも大きな上昇を遂げている点が特徴となります。

直近の最高値は178ドルとなりますので、今回はどの程度株価が調整するのかを注視していきたいと思います。

次に、同社の直近4年間の業績の推移は以下となります。売上は順調に伸びているものの、研究開発費が膨らんでいるため最終利益は赤字が続いています。

Yahoo Financeより引用

また、以下が現在の株価指標となります。

  • 株価:150ドル
  • 時価総額:140億ドル
  • 予想EPS:0.97ドル
  • 予想PER:154倍
  • 配当:なし

Dexcom社の特許

次に、同社が保有する特許についてご紹介します。

© タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名: 佐藤秀峰

同社の日本特許出願件数(公開公報の件数)は現在54件となっております。日本への特許出願年(PCT出願年)ごとの公開公報の件数は以下となります。尚、調査結果にはタイムラグがあります。

また、同社が保有している日本特許の件数は現在17件となります。出願年毎の特許の件数は以下となります。

同社のCGMに関する基本特許は2005年に出願されております。このCGMに関する基本特許出願からは複数の分割出願がされております。

最も重要な点は、CGMの基本特許群の全ては、2025年に特許満了により消滅するという点です。アライン社もそうでしたが、インビザラインに関する基本特許が消滅した後に新規参入組が続々とクリアアライナーの市場に参入してきました。

これと同様に、2026年以降は新規参入組がCGM市場に続々と登場することが予想されます。これは同社の株価に大きなマイナスの影響を与えることが予想されます。

また、 G6の大きな優位点である自動キャリブレーション機能(測定グルコース値と血糖値との間の関係を特定する機能)に関する特許は2012年に出願されております。この特許は2032年まで生き残る予定となります。この自動キャリブレーション機能により指先穿刺が不要となるため、この特許の価値は大きいかと思われます。

CGM基本特許から派生する第5世代までの分割出願 J-Plat-Patから引用

また、同社のCGM基本特許の外国出願ファミリー数は482件にも及ぶのですから驚きです。同社は、革新的なCGMを全世界の6億人の糖尿病患者に普及させるために世界中で特許出願を行っているのです。

これこそが米国企業の凄さです。

破壊的技術を生み出した上で、当該技術を全世界市場において特許により保護する。その後、当該破壊的技術を採用した革新的製品を全世界市場に販売する。これこそが米国企業のグローバルなビジネス戦略なのです。

米国企業は全世界を市場とするため、その成長力も桁違いなものとなるのです。ガラパコス化して国内市場において同じ国内企業同士で争う日本企業とは大きく異なるのです。

次に同社のCGMに関する各基本特許について以下にご紹介します。

今回は米国特許についてはご紹介しません。日本の特許の状況が把握できれば全世界の特許の状況もある程度は把握可能となります。

ちなみに、同社の米国特許公開公報の件数は、現時点で772件となります(AppFT調べによる)。
また、同社の米国特許件数は、現時点で522件となります(PatFT調べによる)。

以下に同社の米国特許件数の推移を示します。以下に示すように同社はホームグラウンドである米国では多くの特許を保有していることがわかります。

Dexcom社の米国特許件数の推移

ちなみに、同社の中国特許公開公報の件数は、現時点で34件となります(CNIPA調べによる)。

また、CGMの特許を理解する上で以下の動画が参考になります。

特許第4870075号(親出願)

【請求項1】
経皮的検体センサを患者に挿入するためのシステムであって、
患者の検体濃度を測定するための経皮的検体センサと、
患者の皮膚に近接して配置されるように構成され、少なくとも前記センサの一部を受容するように構成されたハウジングと、
前記センサを、前記ハウジングを通して患者の体内へと挿入するように構成された針と、
前記ハウジングに解除可能に対合するように構成されたアプリケータと、を含み、
前記アプリケータは、前記ハウジングを通して前記針及び前記センサを患者の体内へと押し込むように構成されたプランジャを含み、
前記ハウジングは、前記センサの挿入の際に、前記センサ及び前記針を摺動可能に受容するように構成されており、
前記システムが更に、針を後退させる際に、前記センサを所定の挿入位置に維持するように構成されたプッシュロッドを含む、システム。

コメント:CGMの基本構造を特定したクレームとなります。以下の図面が参考になるかもしれません。

特許第5161341号(分割出願)

【請求項1】
患者の皮膚に取り付けるように適合され、可撓性または連接性を与える基部を含む取付けユニットと、
前記取付けユニットに脱着可能に接続可能な電子機器ユニットと、
患者の皮膚を通して挿入するための生体内部分及び前記取付けユニットに接続される生体外部分を含み、検体の値を測定するためのセンサと、
を備え、
前記センサは、前記電子機器ユニットが前記取付けユニットに脱着可能に接続されるとき、前記電子機器ユニットに動作可能に接続されており、
前記電子機器ユニット及び前記取付けユニットはそれぞれ少なくとも1つの電気端子を含み、
前記少なくとも1つの電気端子は、前記電子機器ユニットと締まり嵌めを形成している封止材料により水分から保護されている
検体測定システム。

コメント:CGMの防水機能を特定したクレームとなります。

特許第5138819号(分割出願)

【請求項1】
患者の体内に埋め込まれるように構成されると共に、患者の組織の検体濃度を測定するように構成されたセンサと、
該センサに動作可能に接続され、患者の組織の検体濃度を表す検体データを提供するように構成された電子機器と、を備え、
該電子機器が、患者の組織への前記センサの挿入を識別するように構成されている、患者の検体濃度を測定するためのセンサシステム。

特許第5306521号(分割出願)

【請求項1】
検体センサを患者の体内に挿入するためのセンサシステムであって、該システムは、
患者の皮膚への経皮的挿入に適合されたセンサと、
患者の皮膚に近接して配置されるように適合されたハウジングと、
ハウジングを通して患者の皮膚内へとセンサを挿入するように構成されたアプリケータと、
を備え、該アプリケータは、
ハウジングと解除可能に対合するように、且つ、センサが挿入された後、ハウジングから自動的に解除されるように構成されている、
システム。

特許第5646659号(分割出願)

【請求項1】
検体センサからの第1のデータストリームを受け取り、前記データストリームが少なくとも1つのセンサデータ点を含むステップと、
検体センサからの第2のデータストリームを受け取り、前記データストリームが少なくとも1つのセンサデータ点を含むステップと、
前記第2のセンサデータストリームと前記第1のセンサデータストリームとを比較して異常データ値の有無を検出するステップと、を含む、センサデータを評価するための方法であって、
前記第1のセンサデータストリームをフィルタリングすることによって前記第2のセンサデータストリームを得るステップを更に含む、方法。

ここまでの基本特許は2025年まで存続します。

特許第6141827号(親出願)

【請求項1】
検体を測定するシステムの作動方法であって、
時間変化する信号を前記検体センサに印加すること、
印加された信号に対する信号応答を測定すること、
センサエレクトロニクスを使用し、前記信号応答の少なくとも一つの属性を予め定められた感度プロフィールに関連づけて、検体センサの感度を決定すること、
前記決定された感度及び前記検体センサにより生成されたセンサデータを使用して推定される検体濃度値を、センサエレクトロニクスを使用して生成すること、
を含む方法。

コメント:
G6に採用されている自動キャリブレーションに関する特徴を特定したクレームとなっています。

CGMでは、測定されたグルコース値と血糖値との間の関係に基づいて、当該測定されたグルコース値が血糖値に変換されています。従来のCGMでは、グルコース値→血糖値の変換のために指先穿刺が必要でした。このクレームでは、センサの感度を決定した上で、センサの感度とグルコース値から血糖値を生成する点が特定されています。

特許第6466506号(分割出願)

【請求項1】
検体センサと関連付けられている温度を決定するべく構成されたセンサシステムであって、該センサシステムが、
刺激信号を前記検体センサに印加するための手段と、
前記信号の信号応答を測定するための手段と、
前記検体センサに関連付けられている温度を決定するための手段であって、該決定するための手段が前記信号応答の少なくとも一つの属性を温度に対するセンサ属性の予め定められた関係に関連づけることを含む、手段と、
前記決定された温度及び前記検体センサから生成されたセンサデータを使用して推定される検体濃度値を生成するための手段であって、該生成するための手段が、前記決定された温度を使用して前記センサデータを補償すること、及び変換関数を使用して、前記補償されたセンサデータを生成される推定された検体値に変換することを含む、手段と、
を含んでいる、センサシステム。

上2つの特許は2032年まで存続します。

Dexcomのライバル

CGM市場において、デクスコムと競合する他社は、米国の巨大ヘルスケア企業であるアボット(Abbott)となります。アボットは、FreeStyle Libreという商品名のCGMを現在製造販売しております。

以下の動画が非常に参考になるかと思います。

このアボットのCGMも指先穿刺なしの自動キャリブレーションが可能となります。

また、アボットは、日本において、デクスコムよりも多くCGMに関する特許を出願しています。具体的にはデクスコムの54件に対して、アボットは83件の特許出願を日本にしています(※公開公報ベースですのでタイムラグあり)。

また、名古屋大学が血糖値を持続的に測定可能なコンタクトレンズを現在開発しているようです。

さらに、iPS細胞からインスリンを生成する細胞を作製する研究が東工大と第一三共によって現在進められているのです(本ページを参照)。

まとめ

今回私が注目する米国医療機器メーカであるデクスコムについてご紹介させて頂きました。

これらの情報が投資判断においてお役に立てば何よりです。

しかしながら、投資はあくまでも自己責任ですのでこの点ご留意ください。

また、ここ最近、デクスコムの株価は直近の高値178ドルから140ドル付近まで大きく調整しています。同社の株価は、株価指標を見る限りではかなり割高となっているためです。

一方で、9月10日にカナダにおいて最新CGMであるG6がリリースとなったようです。これからG6の世界的な普及が進んでいくため、今後も同社の動向に注目していきたいと思います。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次