【驚愕の成長】特許と企業価値-米国医療機器メーカの株に注目

こんばんは。国際派アラフォー弁理士です。

今回は、特許と企業価値並びに米国医療機器メーカについて簡単に述べます。

このブログですが当初インビザラインについての記事を多く書いていたので、歯科矯正の関係者(患者や歯科医)をターゲット読者に設定していたのですが、インビザライン系のネタが少々尽きてきたので、特許と投資についての記事を今回は書きます。

簡単に自己紹介をしますと、私は知財業界では既に十数年の経験を積んでいまして、内外特許出願関連業務(内々、内外、外内)を主に担当しています。担当するクライアントとしては、世界的大企業からテック系スタートアップまで幅広いです。現在は第4次産業革命(society 5.0)に関連する発明を担当することが多いです。

特に、テック系スタートアップ企業(その中でもディスラプター)の案件は大変ですが大変遣り甲斐があります。彼らにとってはコア技術を保護する特許こそが競争や企業価値の源泉であるためです。特許出願戦略の成否によって将来的な会社の価値(時価総額)が大きく変わってくるのです。

このブログでも取り上げているアラインテクノロジー社は、創業当時において、インビザラインの基本発明に関する特許を世界中に出願しています。1つの基本発明に対して260件を超える外国出願ファミリが存在するのですから、日本企業とはスケールが桁違いに異なります。その後、アライン社は歯科矯正業界のディスラプターとして破竹の勢いで成長しました。この成長の理由としては、アライン社は、世界中でインビザラインの基本特許を取得していため、世界中のインビザライン市場を約20年間独占できたためです。

このように、スタートアップ(特に、ディスラプタ)と特許は非常に相性がいいのですね。特に、バイオ、医薬、医療機器等のヘルスケア業界のスタートアップにとって特許こそが価値の源泉となります。多数の標準必須特許(SEP)から構成された電子機器や通信機器とは異なり、ヘルスケア業界における製品は少数の基本特許によって保護されることが多いのです。このため、弱電業界や自動車業界とは異なり、ヘルスケア業界においては一つの基本特許の価値は非常に高くなる傾向があります。さらに、基本特許に対する侵害訴訟や無効審判も起きやすいです。

目次

米国の医療機器メーカに注目する理由

ヘルスケア業界の中でも今回の記事は、米国の医療機器メーカに的を絞ろうかなと思います。

何故、米国の医療機器メーカに注目するのでしょうか?

このブログでは、知財×海外×経済をミックスした情報を提供することを目標の一つとしていますので、ブログのコンセプトに合致するのですね。

それと、私の専門分野の一つは医療機器であるため。さらに、日本弁理士として日本の医療機器メーカの話はあまりしたくないのと、株式投資と特許の観点からは日本メーカはあまり面白くないからです。日本には、医療機器メーカのディスラプターが少ないのですね。

一方、アライン社を筆頭に米国の医療機器メーカは、リーマンショック以降において驚愕の株価上昇を成し遂げています。さらに、米国の医療機器メーカは、米国市場だけではなくグローバルに破壊的技術を普及させ、急速に売上や企業価値を成長させていくのです。

© タイトル:ブラックジャックによろしく 著作者名: 佐藤秀峰

この点、グローバル展開は日本企業の弱点の一つですね。破壊的技術を持つ日本企業も存在しますが、結局はガラパゴス化してしまい、グローバル展開ができないまま後発の海外企業に先を越されてしまいます。

この理由の一つとして、言語障壁(英語)の問題が大きいかと思います。また、トップが英語が話せない場合など迅速な意思決定ができない点も問題かと思います。

さらに、日本企業は、海外特許戦略も米国企業の周回遅れとなっています。特に大企業以外の日本企業は、予算の問題から積極的に外国出願をしないのです。当初から海外マーケットを諦めているのですね。世界を変える破壊的な発明をしたのなら、莫大な費用はかかるものの積極的にグローバルに特許出願をするべきです。尚、どんぶり勘定とはなりますが、1つの発明に対して主要5カ国に外国出願をすれば、500万円以上の費用がかかってしまいます・・・。ただ、費用削減の方法は色々とあったりします。

また、最近こそは日本の大企業も外国出願の件数を増加させているものの、外国特許から生じる収益の大半は海外子会社からの特許使用料によるものです。つまり、海外子会社の利益を国内に還流させるために特許を利用しているのですね。

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注目の米国医療機器メーカ

私が現在注目する米国の医療機器メーカーは以下となります。

  • Align Technology ( ティッカー: ALGN)
  • DexCom (DXCM)
  • ShockWave Medical (SWAV)
  • Intuitive Surgical (ISRG)
  • Biolux Reseach (未上場 シリーズA)

Align Technology

本ブログでも散々説明してきたアライン社です。参考までに以下の記事をご参照ください。

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DexCom

DexCom(以下、デクスコム)社は、グルコース(血糖)をモニタリングする装置(CGM)を製造開発する会社となります。

同社の最新のCGMであるG6は、グルコース値(血糖値)を常に監視する必要がある糖尿病患者のQOL(生活の質)を飛躍的に向上させる装置となります。G6が身体の皮下に取り付けられた状態で血糖値がスマホやApple Watch等のウェアラブル装置に送信される仕組みとなっており、患者はスマホを通じて血糖値の状態を常にチェックできます。従来のCGMでは、患者が自身の指先に針を刺すことで指先から出る少量の血液から血糖値を測定していました。一方、デクスコムのCGMであるG6では、皮下にセンサが装着されるので、これらの手間や痛みを伴わない点、リアルタイムで血糖値が測定可能な点、血糖値の測定精度が高い点、低血糖又は高血糖のアラーム機能の点で優位性があるようです。

このように、G6によって全世界にいる4億人以上の糖尿病患者のQOLが飛躍的に向上する可能性があるのです。尚、G6と連携するタッチパネル式のインスリンポンプを製造開発するTandem Diabetes Care社(ティッカー TNDM)の株価もここ数年で急騰しております。タンデム社のインスリンポンプでは、患者がタッチパネルを操作することでインスリンを体内に注入可能となります。

また、血糖値のリアルタイム測定を行うCGM、CGMからの血糖値に基づいて自動的にインスリンを体内に注入するインスリンポンプから構成される人工膵臓システム(自動インスリン注入システム)の登場が将来的には期待されています。以下のページが参考になります。

G6については以下の動画が参考になるかと思います。

Dexcomの株価

デクスコム社の株価チャートは以下となります。

Dexcom社の株価チャート Nasdaqから引用

株価は2011年の11月の最安値7ドルから155ドルまで上昇しています。この8年間で株価は約22倍の上昇となっております。まさに凄まじい上昇ぶりです。

Dexcom社の株価指標 (19/8/11時点)
  • 株価:155ドル
  • 時価総額:141億ドル
  • 予想EPS:0.97ドル
  • 予想PER:159倍
  • 配当:なし

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また、デクスコム社についての詳細な記事を書きましたのでこちらもご参照ください。

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【なるほど!】Dexcom(デクスコム)の株価と特許-期待の米国医療機器メーカの今後についての簡単な検証 こんばんは。庶民派且つロスジェネ世代のアラフォー弁理士となります。 以前の記事について驚愕の成長を続ける米国医療機器メーカについて簡単にご紹介させて頂きました...

ShockWave

ShockWave(以下、ショックウェイブ)社は、血管内の石灰化プラークを衝撃波によって粉砕するカテーテルを製造開発するスタートアップとなります。従来、動脈硬化により狭窄化した血管の石灰化プラークを除去する手法として、バルーン、ステント、ロータブレード、エキシマレーザを用いたカテーテルが使用されていました。ショックウェイブ社が提供するカテーテルでは、音圧波による衝撃によって石灰化プラークを粉砕することが可能となります。同社が提供するカテーテルによって、従来に比べてより簡単且つ安全に血管内の石灰化プラークを除去することが可能となります。

以下の動画が非常に参考になるかと思います。

Shockwaveの株価

ショックウェイブ社の株価チャートは以下となります。

Shockwave社の株価チャート Nasdaqから引用

ショックウェイブ社は2019年3月7日にナスダックに新規上場しました。IPO初値は24ドル80セントとなります。現在の株価は43ドルとなります。

Shockwave社の株価指標 (19/8/11時点)
  • 株価:43ドル
  • 時価総額:12億ドル
  • 予想EPS:-2.51ドル
  • 予想PER:ー17倍
  • 配当:なし

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Intuitive Surgical

Intuitive Surgical(インチュイティブサージカル社)は、手術支援ロボットであるda Vinci(ダビンチ)を製造開発する会社となります。手術支援ロボットであるダビンチについては、TBSの医療ドラマであるブラックペアン(主演:二宮和也)でも有名になりましたね。日本でもシスメックスと川崎重工の合弁会社であるメディカロイドが現在手術支援ロボットの開発をしていますね。以下の動画が参考になるかと思います。

Intuitive Surgicalの株価

インチュイティブサージカル社の株価チャートは以下となります。

Intuitive surgical社の株価チャート Nasdaqから引用

同社の株価は2000年4月の最安値3ドルから現在515ドルまでの凄まじい上昇をしています。実に、この19年間で同社の株価は、約171倍となっているわけなのです。

Intuitive Surgical社の株価指標
  • 株価:515ドル
  • 時価総額:594億ドル
  • 予想EPS:10.15ドル
  • 予想PER:50.9倍
  • 配当:なし

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Biolux Reseach

最後に、米国ではなくカナダの医療機器スタートアップ企業のBiolux Research社(以下、バイオラックス社)についてご紹介します。バイオラックス社は、インビザライン治療等の歯列矯正治療の期間を短縮させる加速矯正装置であるオーソパルス(OrthopPulse)を製造販売しています。例えば、オーソパルスを使用することでインビザラインの交換日数が10日から最短3日まで短縮することが可能となり、インビザラインの矯正期間を最大で50%-60%短縮させることが可能となります

同社は今年の5月にロックフェラー系のベンチャーキャピタルVenrock社から1400万ドルの出資を受けております。また、今年の5月31日に、バイオラックス社は、日本のメディカルネット社(コード:3645)からも出資を受けると共に、同社との業務提携契約を締結しました。

バイオラックス社は、現時点において上場はしておらず、シリーズAの段階にあります。この加速矯正装置オーソパルスは、インビザライン以外の全てのクリアアライナーや矯正用ワイヤーにも適用可能となるため、今後の市場規模の拡大が非常に期待されます。また、将来的にはナスダックへのIPOも想定されますので、そのときが非常に楽しみとなります。

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まとめ

今回の記事では私が注目する米国医療機器メーカについて簡単に触れました。

米国では、ハイテク業界とヘルスケア業界が現在の米国経済の成長を牽引しています。この傾向は今後も続くものと考えられています。

また、世界経済の減速や不況の声が最近囁かれていますが、米国株の相場が大きく下落したときに、これらの銘柄を安く購入できる機会が将来的に訪れると考えています。

ヘルスケア業界は、高配当銘柄として知られるタバコ銘柄や石油銘柄とは異なり、我々人類のQOLの向上に直接寄与する革新的な製品を生み出しているのです。また、ヘルスケア業界では、革新的な製品を保護する基本特許の存在が企業価値(株価)に直接関連してくるのです。

私は、ヘルスケア業界のうち、医薬やバイオについては知見がない一方、医療機器に関する発明は専門分野の一つとなります(かなりの案件を取り扱っています)。このように、知財専門家である弁理士としての見識に基づき、知財×海外×株のミックスの観点から米国医療機器メーカに今後注目していきたいと思います。

今日の記事はこの辺で終了します。

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