こんにちは。庶民派アラフォー弁理士となります。
今回は米国株セクター別のETFの分析結果についての記事をご紹介します。
筆者は、米国全株式市場を対象とするVTIやS&P500を対象とするVOOに積立投資を行うことが 米国株投資の最適解の一つであると考えています。その一方で、リスクをVTIと同程度まで抑えつつ、VTIやVOOの投資パフォーマンスを凌駕しうる投資先があるのも事実となります。
株式投資におけるリスク・リターンを考えた場合、投資対象の銘柄数が少ない程、最大リターンも大きくなると共に、損失リスクも大きくなります。イメージとしては、VTI<セクターETF<個別株の順番で損失リスク・最大リターンが大きくなります。
一方で、個別株投資の場合には一発当てるとリターンが大きいものの、倒産リスクや業績不振による暴落リスクがあるため超長期投資には向かないと考えています。
そこで今回の記事では、投資パフォーマンスにおいてVTIを凌駕しつつ損失リスクが少ないセクター別EFT投資について考察したいと思います。
バンガード社のセクター別ETF
今回はバンガード社が販売する以下のセクター別ETFについてご紹介します。参考用としてVTIとVYMを加えています。各セクターETFの経費率は0.1%となり、VTIやVYMと同じくらい経費率は低いです。また、各セクターの最上位銘柄と最上位銘柄の全体ポートフォリオに対する割合を示しています。VHTやVISを除くと最上位銘柄の全体に対する割合は10%を超えていますね。特に、VCRではAmazonの割合が24%、VOXではGoogleの割合が23%となっていることが確認できます。
Ticker | 説明 | 経費率 | 最上位銘柄 | 最上位銘柄の割合 |
VAW | 米国素材セクターETF | 0.1% | Linde PLC | 12.7% |
VCR | 米国一般消費財・サービス・セクターETF | 0.1% | Amazon.com | 24.4% |
VDC | 米国生活必需品セクターETF | 0.1% | P&G | 14.8% |
VDE | 米国エネルギー・セクターETF | 0.1% | Exxon Mobil | 22.0% |
VFH | 米国金融セクターETF | 0.1% | JP Morgan | 10.2% |
VGT | 米国情報技術セクターETF | 0.1% | Apple | 18.8% |
VHT | 米国ヘルスケア・セクターETF | 0.1% | Johnson & Johnson | 9.0% |
VIS | 米国資本財・サービス・セクターETF | 0.1% | Boeing | 5.4% |
VOX | 米国通信サービス・セクターETF | 0.1% | Alphanbet(Google) | 23.4% |
VPU | 米国公益事業セクターETF | 0.1% | NextEra Energy | 11.9% |
VTI | USトータル・マーケット・インデックスETF | 0.03% | Microsoft | 4.1% |
VYM | 米国高配当株式ETF | 0.06% | JP Morgan | 3.9% |
各セクター別の過去の投資パフォーマンス
次に各セクター別の過去の投資パフォーマンス(1957年~2003年)についてご紹介します。このデータはジェレミー・シーゲル教授の名著『株式投資の未来』からのデータを引用しています。
上記より、1957年~2003年までの47年間におけるS&P500の平均年間リターンが10.9%となります(S&P500のリターン≒VTIのリターンと仮定)。S&P500の平均年間リターンを上回ったセクターは、VCR(一般消費財)、VDC(生活必需品)、VDE(エネルギー)、VGT(情報技術)、VHT(ヘルスケア)となります。特に、VDC(生活必需品)とVHT(ヘルスケア)はそれぞれ平均年間リターンが13.4%及び14.2%となり、S&P500の投資パフォーマンスを凌駕しています。一方で、VAW(素材)の投資パフォーマンスが最も低くなっています。
各セクターETFの上場来パフォーマンス
次に、各セクターETFの上場来(設定来)パフォーマンスについて以下に示します。特に、配当を考慮しない各セクターETFの設定来上昇率と、配当金再投資を行った場合の各セクターETFの設定来上昇率について示しています。
Ticker | 説明 | 現在株価(ドル) 2020.2.23現在 |
VAW | 米国素材セクターETF | 130.7 |
VCR | 米国一般消費財・サービス・セクターETF | 201.35 |
VDC | 米国生活必需品セクターETF | 164.53 |
VDE | 米国エネルギー・セクターETF | 72.36 |
VFH | 米国金融セクターETF | 76.51 |
VGT | 米国情報技術セクターETF | 264.68 |
VHT | 米国ヘルスケア・セクターETF | 195.82 |
VIS | 米国資本財・サービス・セクターETF | 158.09 |
VOX | 米国通信サービス・セクターETF | 98.77 |
VPU | 米国公益事業セクターETF | 154.81 |
VTI | USトータル・マーケット・インデックスETF | 169.89 |
VYM | 米国高配当株式ETF | 93.44 |
各セクタのETFは、当初設定時において約50ドルから出発しています。2020年2月23日の現時点において各セクタETFの株価の差が大きくなってきました。
配当金を考慮しない株価だけで考えると、VTIを上回るパフォーマンスを達成したセクターETFは、VCR(一般消費財)、VGT(情報技術)、VHT(ヘルスケア)となります。なかでもVGTのリターンは429%となっており、VTIの上昇率240%を大きく上回っています。
次に、配当再投資を考慮した投資パフォーマンスでは、VTIを超えるセクターETFは、 VCR(一般消費財)、VDC(生活必需品)、VGT(情報技術)、VHT(ヘルスケア) 、VIS(資本財)、VPU(公益事業)となります。VTIの配当再投資後のリターンは、311%である一方で、VGTのリターンは519%及びVPUのリターンは432%となります。
一方、VDE(エネルギ)とVFH(金融)の投資リターンが市場平均VTIに対して大きく劣後していることがわかります。エネルギ株はシェールガスの登場による原油相場の低迷やESG投資が投資リターンに悪影響を与えています。金融株は2009年の世界金融危機が投資リターンに大きな打撃を与えています。
各セクターETFの配当利回り
各セクターETFの配当利回りは以下となります。
各セクターETFの配当利回りによれば、VDE(エネルギ)の配当利回りが約3.9%となっており、最も配当利回りが高くなっています。これはエネルギ株の株価低迷により配当利回りが他のセクターに比して相対的に高くなっているためです。また、VYMの配当利回りが次点となり、約3.1%となります。
各セクターETFの暴落時における下落耐性
次に各セクターETFの暴落時における下落耐性について考察します。各ETFの世界金融危機(リーマンショック)前の最高値と世界金融危機後の最安値の比率である暴落率について以下に示します。
上記より、全米国株市場を対象とするVTIでは金融危機前後において約57%下落したのに対して、VDC(生活必需品)やVHT(ヘルスケア)では暴落率はそれぞれ35.6%、38.7%となります。これより、VDCやVHTは、リセッション(不況)時において下落耐性に強いディフェンシブ銘柄であると言えるかと思います。
一方で、VFH(金融株)は金融危機ということもあり、暴落率は79%に及んでいます。また、VAM(素材),VCR(一般消費財),VDE(エネルギ),VYM(高配当)の暴落率がVTIを上回っています。
さらに、セクターETFにおいて最も投資パフォーマンスが高いVGT(情報技術)の暴落率は市場平均VTIよりも低い51%となっています。不況時においてハイテク銘柄の暴落率が市場平均を上回るとは言えないことがわかります。
まとめ
今回は各セクターETFの投資パフォーマンスについてご紹介させて頂きました。
結論としては、2004年からの投資パフォーマンスが断トツで高いVGT(情報技術)、歴史的に投資リターンが最も高くディフェンシブ銘柄としても作用するVHT(ヘルスケア)、配当利回りが高く安定性が高いVPU(公益事業)、最もディフェンシブな銘柄となるVDC(生活必需品)の4つのセクターが今後も注目すべきセクターETFとして挙げられます。まとめると以下となります。
- 歴史的に最も投資パフォーマンスが高い・・・VHT(ヘルスケア)
- 2004年以降で最も投資パフォーマンスが高い・・・VGT(情報技術)
- 暴落時における下落耐性が強い・・・VDC(生活必需品)
- 高配当且つ安定性が高い・・・VPU(公益事業)
特に、新型肺炎の世界的パンデミックに伴い予期される世界的不況の到来時においては、ディフェンシブ銘柄として作用するVHT(ヘルスケア)の投資パフォーマンスが市場平均VTIを凌駕するものと考えています。
また、金融株とエネルギ株が他のセクターに比して著しく投資パフォーマンスが低いことがわかります。さらに、不況時においては金融株とエネルギー株の暴落率は市場平均よりも大きくなるため、これらのETFは長期投資には不適であると思われます。
また、米国高配当銘柄VYMの投資リターンが市場平均に比して大きく劣後していることも気がかりです。VYMは日本の米国株投資家の間で人気のETFとはなりますが、長期的には投資リターンが市場平均よりも劣後してしまう点を理解していたほうがよいですね。
個人的な見解としては、高齢化社会、世界人口の増加、メディテックの進展により今後も大きな恩恵を受けるVHT(ヘルスケア)に対する投資が長期投資としては無難であると考えます。
また、ここ5年の投資リターンは冴えないものの不況に強いVDC(生活必需品)もVTIを凌駕するパフォーマンスが今後期待できそうです。
一方、圧倒的な投資パフォーマンスを誇るVGTも依然として魅力的な投資先とはなりますが、アップルやマイクロソフトのパフォーマンスに大きく依存する点が分散投資の観点からは気掛かりな点となります。2000年初期のドットコムバブル崩壊を考えれば、VGTはメインではなくサテライト的に購入するのが精神衛生上は良いかもしれません。
皆さんも米国株投資においてセクター別ETFの活用を検討してみてはいかがでしょうか?
今回の記事はここまでとします。それではまた来週!
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